福岡の行政書士ビリーブ

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社会福祉法人の内部留保問題①(資産から)

2015年01月12日

 今回も福祉業界にいた経験から内部留保の問題を考えてきたいと思います。

 巷では、社会福祉法人には内部留保がたくさん貯まっていて、儲け過ぎだから介護報酬や障害福祉サービス事業の報酬を引き下げると言う風潮になっていますね。

 特に特別養護老人ホームを持つ社会福祉法人には、全国平均で約3億円程度の内部留保があるという調査結果もあります。

 そのため、社会福祉法人内に多額の資産をため込んで、あたかも社会悪のような印象を与えています。

 まず、社会福祉法人が儲けすぎと指摘されることは、あたっている部分もありますが、ほとんどは正しくありません。

 それはなぜか、内部留保で指摘される資産のその大半は、現金・預金ではありません。

 約3億円の資産があると言われると、私達は無条件に3億円の札束が積まれているイメージを想像します。そして、それが社会福祉法人の金庫に眠っているかのように思われます。

 しかし、私は、そんなお金が有り余っている余っている法人を見たことがありません。

 それはなぜか、社会福祉法人の資産は、その法人が経営する施設の建物と敷地がほとんどだからです。

 確かに建物と敷地は何億円、あるいは何十億円との価値があるでしょう。

 しかし、それは、事業をするために必要な設備・装置になります。

 ある政党が、「日本の大企業は、内部留保を溜め込みすぎだ、だから内部留保を吐き出せて、弱者増税を廃止しよう。」

 みたいな事を言っていますが、日本の大企業も現金・預金ではなく本社・工場・営業所を含めた資産を持っています。

 内部留保を吐き出させると言うのは、本社・工場・営業所を売り払えといっているのと言っているのと同じだったりします。

 その通り、本社・工場・営業所を売り払ってお金を捻出し、その後は、どうなるのでしょう?

 生産や販売が行えず、社員は全員解雇。会社は、税金や社会保険料を払い続けられなくなります。

 その会社の周辺は失業者であふれ、いわゆる失業保険をもらい、税金や社会保険料が入ってこないので政府の財政が悪化します。

 財政が悪化するので、増税になります。

 内部留保と言うのは、適正な資産を持っていないと事業自体が成り立たないことを意味します。

 社会福祉法人が行なう福祉施設の借入金の償還は、規模によりますが、20年から25年と言うのがざらです。

 その借入金の目的は、そのほとんどが施設整備費にあてられます。

 何十年もかけて借金を返済しないとやっていけない業種なのです。

 もちろん社会福祉法人会計基準にも減価償却があります。その減価償却を適正にしておいて、そこに資産を溜め込んでいると言われても無理があります。

 福祉施設も年々劣化していきます。何十年か経つと建て替えも検討しなければなりません。

 内部留保は、その建て替えをするために積み上がっている分をも含みます。

 そうなると適正な内部留保が、あると言うことは継続的に福祉施設が運営されるということで褒められることだと思います。

 ある日と突然、「施設が古くなったので閉鎖します。つきましては、利用者をお返しします。」と、認知症だったり、障害者だったりする、母や父、兄弟や子供を自宅で見なければなりません。

 そのようなことがないように蓄えているのです。

 そのように適正に運営していて内部留保が過大に貯まっているから報酬を引き下げます。

 と言う理屈は通らない気がします。

 (次回に続きます・・・・。)